明日終わる世界
2023年06月01日
その日はすっきりと晴れた青空だった。
いつもと変わらない空。それなのにどこか切なく見えるのは、きっと人間が知識を持ちすぎたせいだろう。
「ねぇこれ開けようよ」
ひょっこりと、扉の隙間から顔を出した海(うみ)に溜め息をつく。
「それ、あと五年後に開ける予定だろ」
一緒に埋めたタイムカプセル。
その中には僕の秘密が詰まっているから。それは今日開けるべきではない。
「五年後なんて、ないんだよ」
急に真面目になった声。
「五年後も一年後も、明日もないんだよ?」
言われなくてもわかっているのに。海の絶望に満ちた声は何よりも辛い。全部全部、明日には消えてなくなるのに。
「明日…もし。もし私がね、生き残ることができたら…」
言葉の途中で抱きしめて、その先を遮る。
「逃げよう」
どこまでも逃げても無駄だけれど、そんなの誰かが言っただけで本当かどうかなんてわからない。腕の中で海が頷いたのがわかった。将来がどうなるかなんてわからない。
でも、こいつの手を放すのは、世界が終ってからでもいいだろう。
明日終わる世界 2021.10.24