Circle round.
Circle round.
私の愛すべき双子(自作キャラ) 、有栖川宮α(兄)と有栖川宮β(妹)の日常。
「αは?今何を考えていました?」
βが、この前読んだ本のことを考えていたら、その著者の別の本が気になったからと言って教室を飛び出していくと、昇がそう聞いてきた。僕はもちろん、そのβが気になりだした本のことを考えていたわけだけれども、そんなことわざわざ言うまでもない。代わりにこう答える。
「…僕の世界を共有してくれる人間が、この世界にいるのかどうか」
「α…何を卑屈なこと言っているのですか。俺も満も、もちろんβさんだって、αとともに生きているではありませんか」
昇があきれたように溜め息をついて、僕の隣に座っていた満も眉をひそめる。せっかくの美人が台無しだ。
まぁ確かに、僕の周りではたくさんの人が生きていて、僕と関わったり全く関わらなかったり…そうやって一日は過ぎていく。
「そうじゃないんだ。例えば…あれ」
僕は黒板の上にかけれている、白いシンプルな丸い時計を指差す。なんの変哲もない、ただの時計である。
「あれを僕は、白くて丸い時計だと思っている」
僕がそう宣言すると、昇も満もますますわからないという顔をした。
「もちろん俺も、そう認識していますよ」
「よほどの変人でもなければ誰でもそう思うでしょ」
二人の言葉を聞いて僕は頷く。
「だけどな、その白ってなんだ?丸ってなんだよ?僕が思っている白や丸は、お前らの感じているものと本当に一致してるって証拠がどこにある?」
それが、僕の言いたい世界の共有。僕の見ている丸は、昇から見たら四角かもしれないし、満から見たらぐちゃぐちゃかもしれない。僕の認識している丸は、昇の認識ではぐちゃぐちゃで、満から見たら三角かもしれない。そうじゃないと言い切れる確証は、どこにもない。人間はわりと脳に騙されてるって言うし。
「どうかしたの?」
そこに、すっきりとした顔のβが帰ってきた。
「β…αはやっぱり、変な子ね」
困ったように満がそう言った。思ってることを言っただけなのに。
「βさん、あれ何ですか?」
そう言ってあの時計を指差す昇を、βは奇怪なものを見るように見て答える。
「あれは白いシンプルな丸い時計だけど」
それが何か、と言いたげにβは今度は僕を見る。
「お前が丸だと思っているものと、僕が丸だと思っているものに差異がないと思うか?」
βは納得したように頷いた。
「自分の見えてる世界と他人が見ている世界が同じかってことですね」
βは少し考えてから僕に言った。
「α、x^2+y^2=r^2は何ですか」
「そんなの。もちろん円だろう」
僕は文系だが、そこまで馬鹿ではない。
「そうですね。正しくは半径rの円ですが。つまりそういうこと。この式が表すのは円で、それは誰がどう見ても一緒。それが私たちが同じ世界を共有していることの証明」
βは満足気にそう言い切った。でもその方程式を表すものが僕の世界とβの世界で同じ形をしているかとか、そんなことは正確にはわからないわけで…。
「α、数字も数式も嘘をつかないから」
だから、x^2+y^2=r^2も(p(→)-a(→))・(p(→)-b(→))=0も円で、それらが示す形は誰が見ても同じもので、僕らはそれを円と呼ぶんだと。βはきっぱりとそう言った。
「…お前はすごいよ」
「私じゃなくて数学がすごいの」
βが同じ世界だと言うから、それが偽りだと言う証明ができないのなら、僕はそれを信じてみようと思った。
有栖川宮αの世界観。
Circle round. 20xx.02.22