アダマスの輝き
2人用フリー台本。
男女ペア。男:光(演者のお名前に変更可)
女「私ね、死んだら宝石になりたいの。」
男 「宝石?なんでまた急に。」
女 「そうしたら、誰にも咎められずあなたと一緒にいられるでしょ?」
男 「うん?今だって、誰も咎めてなんていないけど。」
女 「そう思っているのは、君だけだよ。」
男 彼女は最初から、掴めない人だった。
≪回想≫
女 「ここ、空いてるよね。」
男 「空いてるけど…。俺の噂知らないの?」
女 「"御曹司"の 光 くん?」
男 「…まぁ。」
女 「それとも、その肩書きにつられて言い寄ってきた女の子をこっぴどく振ってる って話?」
男 「はっ…知ってるのにまだ俺に近づいてくるなんて、物好きな女。」
女「だって興味ないもの。」
男 「は?」
女 「勘違いしないでほしいんだけど、私毎週この席で授業受けてたのよ?割り込ん できたのはそっち。」
男「あ、あぁ…。」
女 「わかったら話しかけないで。」
男 彼女は、変わった人だった。凛としたその瞳の先に俺はいなくて…だからこそ、惹 かれたのは俺の方だった。
女 「で、なんでまたここに?」
男 「別に…俺がどこに座ろうと関係ないだろう?」
女 「別にいいけど。」
男 「あのさ。」
女 「何?」
男 「その…いや、なんでも。」
女 「ふーん。」
男 「…なんだよ。」
女 「ねぇ。この後一緒に、ご飯食べよっか。」
男 悪戯っ子みたいな微笑み。彼女が俺の生活の一部になるのに、そう時間はかからな かった。
女 「あのさ、光。」
男 「何?どうしたの?」
女 「昨日、光 のお母さんに会ったよ。」
男 「…は?」
女 「『あなたはうちの 光 にはふさわしくありません!』だって。漫画みたい。」
男 「何勝手に…。」
女 「小切手って初めて見た。」
男 「そんっ…!」
女 「もちろん突き返したよ?置いて帰られたけど。」
男 「あのさ…。」
女 「ねぇ 光。世の中、どうしようもないことってあるんだね。」
男 そうして、その日を境に、彼女は俺の前から姿を消した。「金で心変わりした強欲 な女」と、両親は彼女をそう呼んだ。
男 「…この荷物、彼女からか。一体何を…。」
女 『私の想いは離れていても消えないわ。」
男 「はっ…このダイヤ、母さんからもらった小切手で買ったのか?…でかすぎだろ。 相変わらず、掴めない人だなぁ(涙声)。」
男 涙で滲んだダイヤモンドの輝きは、あの日の彼女の瞳と同じように…凛と澄んで いた。
アダマスの輝き
2023.06.05