ホットココアと指先の熱。 -共通部分-

※ こちらは"フリー台本"ではありません。
Spoon男女ペア声劇CAST投稿企画
用意された二つの結末から好きな方を選んでCAST投稿をしていただきました。
投稿期間:2022.11.27-2023.02.28
登場人物
悠(はるか):社会人。雫の3歳上の兄。昔から雫が一番大事。
雫(しずく):社会人。悠の妹。悠が好きで就職時、悠の会社に近い企業を選び同居することに。
雫 「ううっ…寒い。寒すぎ」
悠 「ほーら。いつまでそこにいるつもり?」
雫 「だって部屋の中寒すぎるんだもん。出たくない…」
悠 「はい、ホットココア。作ってやったから出ておいで」
雫 「え、やったぁ!《布団から出る》悠の作ってくれるココア、好き」
《沈黙の間に流れる時計の音》
雫 『私と悠は、兄妹(きょうだい)だ。社会人になってから一緒に暮らすと両親に告げても「本当に二人は仲良しね。」と、そう言われてしまうくらいの仲良し兄妹』
悠 『幼い頃から雫はどこに行くにも俺と一緒についてきて、俺はそれが当たり前だと信じて疑ったことはなかった』
雫 『だけど、どんなに寒くても、私たちは決してお互いの熱に触れることはできない』
悠 『触れたら、それが最後だと。…今まで薄氷の上を歩く気持ちで守ってきたものを、壊してしまうと知っているから』
雫 「例えばどこかのご都合主義のライトノベルみたいにさ…」
悠 「ご都合主義って、そんなこと言ってやるなよ」
雫 「だってご都合主義でもなければできないよ。…兄妹で幸せになるなんて」
悠 「なぁ、雫。本当に、独りで大丈夫か?」
雫 「大丈夫だよ。…さすがに、お兄ちゃんの転勤に妹がついていくなんてできないし」
悠 「そんな寂しげにココアを見つめながら言われても、全然納得できないけどな」
雫 「納得してよ!私だって、納得しようとしてるんだから」
悠 『いつまでも一緒にはいられないと、そんなことはとっくにわかっていたのに』
雫 『お互い、はっきりとした言葉を紡ぐことができなくて』
悠 『ただそっと、丁寧に入れたココアの温もりが…』
雫 『このマグカップ越しに感じる温もりが…』
悠/雫『俺たち/私たちを繋ぐ温もりだった』