ホットココアと指先の熱。 -指先で探る熱-
2023年06月01日
※ こちらは"フリー台本"ではありません。

悠 「まさか俺の方から離れる日が来るなんてな」
雫 「仕方ないよ。仕事だもん」
悠 「一人でもちゃんと暮らしていける?」
雫 「さっきから私の心配ばっかり」
悠 「心配だよ。…雫は大事な"妹"だから」
雫 「…ありがと」
悠 「なぁ、雫…」
雫 「あのね、"お兄ちゃん"。…ココアの作り方、教えて欲しいな」
悠 「あ、あぁ。もちろん、いいよ」
雫 「覚えておくね。お兄ちゃんの作ってくれた、ココアの味」
悠 「…あぁ、忘れないで」
雫 「お兄ちゃん。…大好き!!」
《飛行機の飛び去る音》
雫 「はぁ…寒い。寒すぎ」
《コンロに火をつける》
雫 『あれから、何度かの冬が来た。過ぎ行く季節を甘くて温かいホットココアが支えてくれる』
悠 『この季節が来る度に、寒さに震えていた彼女の姿が脳裏に浮かぶ』
雫 『お兄ちゃん、風邪引いたりしてないかな』
悠 『どうかココアが、彼女を温めてくれていますように』
雫 『指先から感じるこの熱だけが、今もあなたを探していた』
悠 『今も君を探していた』
ホットココアと指先の熱。 -指先で探る熱- 2022.11.27